認められないまま

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 若かりし頃…私は、児童書専門店に勤務していました。

 そして…隣は、一般書を扱っていました。

 その一般書には、書店業界では、名が知れていた方が勤めていました。(後から知るんですけどね)

 私は、彼がとても怖かった

 入社して間もない私は右も左もわからない小娘でした。

 社食で昼食をとってる際…本を読んでいるわたしの横に座った彼はおもむろに

 「お前も本読むんだな…チャラチャラした馬鹿なのかと思った」と笑っていましたが…

 その一言は今でも私の心の小さな傷として残っています。

 彼はいつでもどこでも本を読んでいました。

 彼が目的で足を運ぶお客様が沢山いらっしゃいました。

 時々…私の先輩たちに彼は、本を進めたり…

「 君には、こんな本が面白いと思うよ」などいろいろ小説を提供する姿をよく見かけましたが…

 わたしは、「私にお勧めの本教えて下さい」などと声をかけるのもおこがましいと感じていました。

 そのうちに彼は、違う店舗の店長として…移動なさって、わたしと会うのは、店長会の時だけ挨拶するぐらいとなりました。

 けれど…わたしは、彼の姿を見ると緊張がはしるので…鉢合わせしないように姿を隠しました。

 そんなある日知らぬまに彼がわたしの側にきて

 「児童書お前が仕切ってるんだって?この世も末だな…」また嫌味か〜ぁと思った時

「でも頑張ってるな」と一言だけ残し背中をむけたのです…私は胸が熱くなりました。

 それが最後でした。彼と会う事は、二度とありませんでした。

 私は書店を退社して出版社へ…彼は、故郷に戻られたと人伝てに聞きました。

 あれから何十年が過ぎた事でしょう

 私が図書館に勤めていた頃新刊で入荷された本の著者が、彼だったのです!

 そして… 2020年2月17日65歳という若さで亡くなった事をしりました。

 書店勤務の際は、「カリスマ店長」と言われ…

  図書館勤務になってからは、県内トップに導いたと言われた実に素晴らしい功績を残された方です!

 今でもいろいろな方に惜しまれています。

 わたしは、彼の存在を知ってから…どこかでいつも認めてもらいたいと思っていた気がします。

 背中を追っていたのかも知れません

 唯一彼がわたしに

 「読んでみろ馬鹿なお前でもきっと面白いよ」と

 進めてくれた本を

 月命日だった昨日…本棚から取り出してご冥福を祈るのでした。

      『愛犬物語 上下』

     ジェイムズ・ヘリオット

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 犬にも人格?があります。変な癖のある犬やダイイエットに励む犬(笑)憂さ晴らしをする犬だっているのです。 

 名医ヘリオット先生と40匹の犬の心温まる愛と感動の物語です。

 訳者の畑正憲さんは、この本を 

 動物文学というより人間文学である

 とおっしゃっています…

 犬の好きな方には、たまらない1冊

 癒されます♪

 笑ってほろりとしてユーモア満載です。

 沢山の愛が詰まっています。

 確かに…馬鹿な私でもとってもとっても楽しまさせていただきました。

 ずっとずっと手元に置いておきたい作品

 大切に読みかえし続けたい小説です!

 皆さんも機会があれば一読していただきたいです。